2021-10-29 日本最北端の地で育まれた海の幸。幸せを届ける中央水産の心意気に迫る|HFT13

日本最北端の地で育まれた海の幸。幸せを届ける中央水産の心意気に迫る|HFT13

現在、世界中から注目されている「北海道ブランド」。

広大で豊かな大地とパイオニアスピリッツから生み出される名産品の数々は、多くの人々を魅了して止みません。

雄大な自然が広がる北海道は正に食の宝庫です。

厳しい気候と向き合い、時には調和し、時には抗いながらも大切に育てられた野菜や果物や穀物。広大な大地で安全に育て作られた畜産や乳製品。栄養豊富な大洋から水揚げされる新鮮な魚介類。その他、様々な自然の恵みが私たちの生活を豊かに彩り、充足をもたらしてくれます。

そして、その恵まれた素材や原料を活かした魅力的な加工食品も多く製造されています。

ライズ北海道では、道内において優れた食への取り組みを行っている企業や団体、また個人も含めて「北海道食宝」としてご紹介しています。

北海道の食産業に携わる方々の情熱や想いを知り、それを感じて頂くことによって、一人一人が刺激を受けたり、インスパイアされる。それが北海道全体の昂りや興隆に繋がればという願いを込めて、生産者さんを取材し、情報発信を続けております。

 

道内インタビューもついに最北端の稚内よりお届けします。今回は「令和3年度北海道新技術・新製品開発賞-食品部門-大賞」を受賞した「中央水産」さんにお話を伺いました。
稚内で歴代続く水産会社、時代とともに移ろいゆくトレンドに合わせた商品開発、従業員の方々、地元への想い。

 

(宗谷岬「日本最北端の地」のモニュメント

 

安心や安全にこだわった商品への想いはまさにプロの心意気そのものです。
飽食の時代にある今だからこそ、その想いの強さは人一倍だという中陳社長。

これからの稚内、北海道の食の未来を伺ってきました。

 

中央水産の中陳社長にインタビュー

中央水産株式会社 代表取締役 中陳大樹さん
取材:ライズ北海道  山本、林(撮影)

稚内と商品開発について      

(中央水産㈱社長 中陳大樹さん)

 

山本)稚内、久しぶりに訪れました。やはりいい街ですね。

中陳さん)そう言って頂けると嬉しいですね。お土産屋さんなど立ち寄りましたか?

山本)まだ行けていないので、この後立ち寄ろうと思います。中央水産さんの商品もお土産さんには並んでいるんですか?

中陳さん)ええ。何品かは並んでいます。ただ、稚内市内だけでみるとなかなか売上も厳しいものがありますね。今一番買っていただいているのは稚内空港です。商品自体、実際に購入されるお客様を見ていると、市内の方というよりも観光として稚内を訪れて、そこでの思い出として弊社の商品を手に取って頂くことが多いですね。

山本)やはり人の流れで購入量は大きく変わるんですね…。今回受賞されたアヒージョなんかはそういう意味では常温で保存できるという大きな利点があって手に取りやすいですよね。(「蛸と昆布のアヒージョ」が令和3年度 北海道新技術・新製品開発賞 食品部門 大賞受賞)

中陳さん)そうなんです。稚内名物として、かつ持ち運びしやすいものとして売り出したいという思いは少なからずありました。そういった背景もあり、札幌のデザイナーさんに「日本最北端の地の碑」がイメージできるようなデザインにしてもらったんです。

 

(北海道新技術・新製品開発賞-食品部門大賞の盾と賞状を持っての一枚)

 

山本)確かに、インパクト大ですもんね。ただ、デザインへのこだわりというところを鑑みると、商品価格の調整など難しかったんではないですか?

中陳さん)おっしゃる通り。実は、開発当初はワンコインで購入できるものをと考えていたんですが、昨今の海産物の漁獲量減少との兼ね合いもあり、量を作って量を売るというスタイルは、限界が来るんじゃないのかと考えたんです。そこで、「nakaichi collection」という形で中価格帯の商品を開発していこうと考えるに至りました。

山本)ただ闇雲に獲りつくして、それを安く売るというモデルについては、昨今問題提起されていますよね。自然とともに、人も考えていかないといけないですよね。では今回はその第一弾で?

中陳さん)はい。何にしようかと考えていた時に、趣味のキャンプでアヒージョを作っていたところ、これだと。そこから開発を始めました。実は開発初期、タコと昆布だけでなく、ホタテも構想の中にあったんです。

山本)ホタテ、最高じゃないですか。何か問題があったんですか?

中陳さん)そうなんです。タコの色素が思ったよりも強く、ホタテに移ってまだら模様が付いてしまったんです。せっかくのホタテが、ビジュアル的に悪くなってしまうということで、今回はホタテを外す形になりました。味としてはおいしいんですけどね…。

ただ、その代わりにタコの分量を多くすることで満足感を損なわせないように注意しました。そのおかげ、といっては何ですが、オリーブオイルなど他の調味料とのバランスが取れて、最高の形に仕上がったなと満足しています。

 

(工場内に並んだ剥きホタテ)

 

山本)なるほど。そうしたところも実際に手に取るお客様の目線でやっているわけですね。細部にこだわりが光りますね。満足感を損なわず、商品の色合いや見た目にもそうしたこだわりが詰まっているんですね。

中陳さん)まさに。「nakaichi collection」は特にこだわりを持って開発していきたいという思いがあったので、そうしたところにもこだわりを持ちました。

山本)なるほど。ちなみに素材選定の際のコンセプトみたいなものはありましたか?

中陳さん)はい。商品としてのテーマを掲げたいということで、「日本海」と「オホーツク」の両方から素材を仕入れるということを考えました。そこで、タコは「オホーツク」。昆布(利尻昆布)は「日本海」という形で商品選定を進めた次第です。

山本)確かに、このフレーズはお客様からみても魅力的ですね!稚内という地域だからこその利点。それを存分に活かしていると感じました。他には、やはり調理の工程でもこだわりが?

社長)調理に関しても、タコは水分量が多く形が崩れやすいので下処理としてさっと茹でてあります。実際に、なかなか簡単にはいかず、試行錯誤で1年半ほど費やしました。ここは本当に大変で、調味料の配分を変えたり、タコの下処理方法を変えてみたりと。一時、タコばかり食卓に出てくる(試作品)と周りの人にもチクリといわれるほどでしたよ(笑)。

(真剣な表情で商品開発について話す中陣さん)

 

ノーステック財団の支援について

山本)それだけの年月を要しましたか。情熱のたまものですね。私だったら途中で諦めてしまいそうです。やはりそういった中でノーステック財団を始め、多くの方々の支援・応援があったわけですね。

中陳さん)そうです。ノーステック財団さんには本当に色々お世話になっています。主にデザイン制作費と開発に必要な旅費でご支援いただきました。実際に自分だけの力で行うとなるとどういうツテでいくのか、幾ら掛かるのかなど不安なところが多いので、そういう意味で大変助かりました。

山本)確かに。やはりデザインをするうえでプロが入ったことはプラスでしたか?

中陳さん)もちろんそうでした。どうしても水産加工品となると男性色が強いことが多かったんですが、新しいデザインを取り入れたことで女性のバイヤーさんから声を掛けていただく機会が多くなりました。今までとは異なった客層を狙っていけるというところは大きかったですね。最初の話ではないですが、実際に商品を売っていくとなると、どういうお客様に購入頂くのかを想像しますよね。そういう意味では、この商品によって、想像していたお客様とは違う方々にアプローチできることになり、私自身も驚いています。

 

(受賞の盾)

 

山本)確かに、このデザインはかなり目を引きますし、男女問わず「おっ!」となりますよね。そうした努力が実を結び、大賞受賞に至るわけですね。品評会などには今までも出品歴はあるんですか?

中陳さん)はい。実は昔、フードアクションニッポンに出品したことがあります。獲れる数が少なく、地元でしか食べられていない魚や、実は価値があるもの、とくに骨が多い魚などを選別して商品化したものですね。いわゆるSDGsのはしりみたいなものです。それで奨励賞を頂いたりしました。

 

(「切れ端ひとつも無駄はない」と語る中陳さん)

 

漁獲量減少の影響、品質への想いについて

山本)時代を先取りする形で商品開発を行われていたんですね!やはり漁獲量の減少などは年々影響が大きいんでしょうか。

中陳さん)少ないと言ったら嘘になりますね。価格も相対的に上がってきているので、大手の会社と価格のやり取りなどを行うときは肝を冷やす頻度が多くなった気がします。だからこそ、一つ一つの商品開発にはコンセプトをきっちり定めていかないといけないなと思っています。金額だけで戦っても最終的には長い目で見ればお客様・従業員全員が不幸になってしまうんじゃないかと思うんです。どこに重きを置いていくのか?というのは今でも悩みますね。

山本)難しい問題ですね…。そういった中でも稚内の地で長年続けてこられたということは、企業としての理念も確固たるものをお持ちだからこそですね。

中陳さん)そういわれるとちょっと照れますが(笑)。製品・企業としての安心安全、コンプライアンスには注意を払っています。せっかく買ってくださった商品でお互いに嫌な思いをしたくないですから。

山本)こういう時代だからこそ、ですね。

中陳さん)社内に対するベクトルも同様で、待遇が悪い会社にスタッフは集まらないですよね。「良い人材=良い商品」という考えがモットーなので、特に注意をしています。

 

(社員への想いを語る中陳さん)

 

中陳さん)扱っている商品が生ものということもあり、品質や安全性、味など特に注意をしないといけないですよね。凍結の回数なども厳しく決めており、例えば、ある道内大手の宅配サービス向け商品については「1回冷凍」のものを出してご好評を頂いています。海外品は3回冷凍(=食べるまでに3回解凍)しているものもあるので、食感や味などに大きく影響してきますよね。

山本)お客様のことを思うからこそ、ですね。商品の開発に関しても同様のお考えで?

中陳さん)おっしゃる通りです。自分の近くにいる人が食べてくれた時に、心の底から「おいしい、うれしい」と思ってもらえるような商品開発を目指しています。言ってくれた方も、言われた方も、うれしいじゃないですか。そういう「うれしい」を届けたいというのが自分の一番のモチベーションになっています。

 

(商品開発室-この中で新商品の試作が日夜行われる)

 

山本)本当に強い思いですね。そうした思いを胸に営業されてきたからこそ、稚内という地でこれだけの歴史を歩まれているんですね。

中陳さん)稚内と言う場所での優位性を全国に発信していきたいというのは強い想いとしてあります。たしかに、都会ではないので、やれ何がない、どの店がないなど不便な経験はゼロではないです。ただ、この土地だからこそ、これだけ良いものが作れるんだぞということを伝えていけるような商品が作っていきたいですね。

山本)大切なお考えですね。となると、店舗の拡大なども考えていらっしゃるんですか?

中陳さん)いえ、自分としては今ある商品をより洗練していきたいと考えています。人口の問題や働き手の問題などもあるので冷静に考えたときに今あるものの精度を高めていくのがベストですから。

 

(稚内港北防波堤ドーム)

 

北海道の食の未来について

山本)非常に考えさせられます。お客様や従業員、地元のことを思えばこそ、ということですね。日本全国、北海道の食など大きな転換期が来ていると思うんですが、そのあたりについては何か感じていらっしゃることはありますか?

中陳さん)はい。もっとみんな楽しもうよ!と思っています(笑)。いやらしい意味ではなく、ある程度の儲けについてはもう少しシビアになってもいいのかな、と。そうした意味での余裕があれば、次は何を作ろうかな、どんなことをやろうかなとポジティブな考えになりますよね。こと北海道には良いものがたくさんあるので、自信を持って商売をしていけるような風潮が出来上がると嬉しいなと思います。

 

(真っすぐな瞳は食の未来を見つめている)

 

 

『稚内の地を愛し、未来に思いをはせる』

もっとみんな楽しく商売を行っていきたい!と笑顔でお話くださった中陳社長。

その目はまっすぐ将来の稚内、ひいては北海道の食の未来を見据えていました。

 

「自分が今できることをまっすぐ、ひたむきに。

お客様、従業員の方々など周囲の人々の喜ぶ顔が一番の宝物」と仰います。

 

(中央水産外観)

 

お話の中では、現在の日本が直面する飽食の時代、当たり前のように安価な商品が並ぶ現状を危惧していらっしゃいました。

 

『こだわりの商品を、皆さんの大切な人に食べてほしいと思います』

 

愛情あふれる「蛸と昆布のアヒージョ」、皆様の大切な人に届いたら嬉しいと心の底から思います。

(ライティング:後藤蓮、編集:後藤蓮、山本純己)

 

 

沿革

昭和48年9月   魚体前処理を主体に操業開始
昭和50年8月   現在地に食品第一工場建設、乾燥機2基設置
昭和54年5月   工場増築、乾燥機1基増設
昭和55年3月   初代社長 中陣長七没・二代目 中陣憲一就任 
昭和58年9月   事務所・冷蔵庫増築
昭和61年12月   乾燥機1基増設
昭和63年10月   前処理第二工場新築、乾燥機、冷蔵庫、研究開発・検査室設置
平成2年12月   事務所、クリーンルーム増設/増資・資本金1,650万円
平成6年3月   加圧加熱殺菌機(レトルト釜)導入
平成13年1月   冷蔵庫新設
平成13年5月   第三工場増設
平成21年3月     スチームコンベクションオーブン導入
平成28年9月   三代目 中陣大樹社長就任  

 

企業情報

◆企業名|中央水産 株式会社
◆住所|稚内市末広2丁目6番25号
◆電話番号|0162-22-9607

 

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